「祝婚歌」 吉野弘
二人が睦まじくいるためには
愚かであるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで 疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい
先日、会話の中で出てきた
吉野弘さんの祝婚歌。
そう言えばそんな詩があったなと
久しぶりに読み返し見てみたら
改めて、とても素晴らしい内容でした。
夫婦はもちろんのこと
友人であれ、親子であれ、師弟であれ、
上司部下であれ、人間関係は全て
こういう形であれたら幸せですね。
そんなこと思った秋の日です。